星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」第33話

第33話「示される世界」

この作品の面白いところは、主人公がキラとアスランとシンの3人いて、それぞれの置かれている立場が、誰が正義ともまるきり判別のつかない点だろうね。だからこそ、感想サイトも大混乱なんだけど、作り手側はわざと混乱を煽って、さて、誰が正しいと思うか考えてごらんなさい? と、こちらに突きつけているように感じる。感想サイトの大混乱ぶりでさえ、制作者側の予想の範囲内ということなんだろうね。

少し前に「何が正しいのかなんて、そう簡単にはわかるわけがないんだから、自分なりに自分が正しいと思ったことをその時その時の判断で精一杯やるしかない」みたいな感想を書いたこともあるんだけど、この作品ではそれさえもダメだ・・・と、突きつけてくる。

3人の主人公たちが、それぞれ自分の立場で自分が正しいと思ったことを精一杯やっているのに、それは結果として相手の足を引っ張り合って、互いに大混乱を招いている。互いが互いに「あなたは何をやっているんですか?」と声を荒立たせて、それでいてその誰もが間違っているかも知れないのだと物語は突きつけてくる。

一方で、そんな彼らの様子をチェスの駒よろしく操って、高みから見下ろしている人物がいる。それが議長なんだけど、彼もまた自分なりの正義を貫くために、言葉巧みに子どもたちを操っている。しかも、彼でさえ本当に正しいことをやっているのかわからないように、怪しく怪しく描いている。

これは面白いわ。ひたすら見ている側に「あなたはどう思いますか?」と問いかける作品になっている。明確な答をあえて提示せず、こちらに考えさせるようにし向けているんだね。

何をやってもおとがめなしのシンは、ますます増長する一方だけど、これは「大人が子どもを叱らないとどういう結果になるのか、考えてみろ」という警告に見える。基本的にシンは無邪気すぎるほど素直な子どもだ。だからこそ調子に乗って増長するんだけど、現在、現実に「子どもを叱れない親」があまりにも多いのは確かだ。だからこそ、彼の姿は、我々に対してすごくイタイ警告になる。一体、誰が、世界を焼いてしまったのか? 自分たち、何も考えていない無責任な大人ではないのか?

すべての人がもっとこれを身近な問題として考える必要がある。かなり重いテーマを扱っているんじゃないかと、真剣に思えるようになってきました。ますます続きも楽しみです。