星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「西日の町」 湯本香樹実

小説・一般25.「西日の町」 湯本香樹実 文春文庫

いい作品でした。

淡々と綴られていく登場人物の描写が、本当に上手いと思った。短いセリフで、キャラクターの心理をさらっと描いていく。こういう文章が書けたらいいなあ・・・と思ったけど、これは本当に難しいね。

登場人物は、小学生の「僕」とお母さんとてこじいの3人。あと、お母さんの弟で叔父さんも出てくるけど、メインは家族として一年間だけ一緒に暮らした3人の記録だろう。

こんな出来事があったと、大人になった「僕」が回想していくんだけど、父親のいない少年の目から見た祖父の姿が、すごく魅力的に映るのは不思議。人生の最後にホームレス寸前になっている、なんかもう荒んじゃっているくそじじいなんだけどね。

断片的に語られるセリフから、この人はたぶん、こんな人生を歩んだんだろう・・・というのが見えてくるからすごい。あと、「僕」の母親であるてこじいの娘と父親との絆も感動的でした。

娘から見た父親への苦々しい愛情がよく出ていたと思います。

夜更けに爪を切る娘。親の死に目に遭えなくなると承知で、父親の目の前で嫌がらせのように切り続ける・・・。そういうシーンから始まるのが、本当にすごいなあ、と思いました。よかったです。

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