Karte50「引き裂かれた兄弟」
「兄弟っていいわのよね」とピノコは言っていたが、私がむしろ感動したのは、兄弟の絆よりも親子の絆の方だなあ。
「父さん、医者の道を選んだのは僕の意志だよ」「もう、昔のことにこだわらなくてもいいんだ」と言った息子が立派。この話のポイントはそこだと思うから。
父親の遺志を継いで、医者になりたいと決意した兄弟だったけど、兄と弟のどちらに感情移入するのかで、この物語の見方はまったく変わってしまうと思う。私の場合は、圧倒的に弟の味方だ。
だって、あの兄貴、ひどすぎると思う。彼にとって弟は、自分の夢を叶えるためのただの道具ですか? 自分が弟にこうあって欲しいと思うから、その夢を押しつけ、彼の意志を無視して、強制的にこれをやれ、あれをやれと命令した。それに耐えられなくなった弟が、兄の意志には逆らうことを決意する。
ただ、オチの部分だけど、自分の息子を代わりに医者にした・・・という設定は結構危険で、結局、お前も自分の夢を息子に押しつけただけなのか? と、一瞬思ったんだけど、そこは息子の方が先にきちんとフォローしてくれた。
自分は父さんのために、自分の意志で医者になったんだって・・・。
それが大切。どんな夢を見、どんな道に進もうとするのかは、あくまで本人が自分の意志で決めるべきなんだ。たとえ、兄や親であろうと、弟や息子を「医者になれ」と強制的に決めつけて、縛るべきじゃない。縛られる方はたまったものではないんだと言うこと。
それが読みとれれば、この作品の意味は大きかったと思う。いい話でした。