星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「アルプスの少女ハイジ」 ヨハンナ・シュピリ

小説・一般51.「アルプスの少女ハイジ」 ヨハンナ・シュピリ 角川文庫

これはいい作品だった。確かに、名作の名にふさわしいかも知れない。

フランクフルトで絶望したハイジが「どんなにお祈りしても、神様はかなえてくれないとわかったの」と嘆いたときに、おばあさまがハイジを励まして、

「神様は必ず救ってくださいます。ただ、まだその時期が来ていないだけなのよ」

と言う。このセリフがポイントなんじゃないかと思った。その時は必ず来るのだけれど、全てがうまくいくために一番いい時期を選んでいるので、しばらく我慢しなきゃ行けないんだって、そう信じて、待ちなさい。と言うんだな。

今の全ての苦しみは、後の日の幸せのためにあるんだって・・・。いいセリフじゃないですか。その部分に感動しました。

原作とアニメの相違点としては、クララの車いすの件は以前書いたとおり、原作ではペーターが壊してます。しかし、それによって、クララは歩けるようになったわけだから、これも神様の導きという形。悪いことをしたペーターには、それなりの罰が当たって、彼はしばらく罪悪感に苦しんだわけだから、それ相応の報いを受けたことになります。しかし、そもそもクララたちフランクフルトの人間は、ペーターたちから見れば、ハイジを連れて行ってしまった悪い奴なので、彼の気持ちにも情状酌量の余地はあるのかも知れない。

あと、おじいさんが息子を失って、山にこもってしまったいきさつとか、戦争中に手足の不自由な人を看護した経験があって、それでクララを治すことも出来たとか。そう言う細かい設定の部分も興味深かったです。アニメの方では、それを全部はしょってましたから。

あと、アニメで描かれなかったエピソードとして、クララのお医者様が、愛娘を失ってショックを受けていたときに山に来て、ハイジに慰められるという話があります。

それですっかり山を気に入ってしまったお医者様は、フランクフルトの家を処分して、デルフリ村に住むことにし、こうして村には、新しくお医者様まで来てくれるようになった。最終的にハイジは、お医者様の一家と暮らすことになるのだと、物語は暗示して終わるし、そうやってすべてがうまく収まるところに収まるんですね。

一人の少女の存在が、全ての人々を幸せにしたという物語の構成が見事でした。全ての必要としている人のところへ、必要なものが見事に運ばれていくという、すごくきれいな物語でした。よかったです。