星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「神の守り人」下巻・帰還編 上橋菜穂子

小説・一般28.「神の守り人」下巻・帰還編 上橋菜穂子 新潮文庫

何年か前に、小学生の女の子が同級生を殺した事件があったけれど、なんとなく、それを思い出した。子供(それも女の子)でも、憎しみで人を殺すこともあるんだと。そんなことをしたら、どうなるのかと、教える意味でも、こういう重いテーマの児童文学は必要なんだろうなあ、と思った。

「わたしは、大きな遊戯板なんかどうでもいい。神も、王家も、どうでもいい」
「ただ、どうしても許せないのは、シハナや、あの子の母親までもが、寄ってたかって、あの子に、人殺しをしろと、そそのかしていることなんだ」
「だれかが、伝えなければ・・・。あの子に人を殺すことのおぞましさを・・・」
「いつになっても、穏やかな日々に安らぐことの出来ない闇が、その先には待っているんだと・・・」
そのセリフは、バルサが言ってこそ、重みがあるんだろうという気がする。彼女は、戦う人だから、その気持ちを誰よりも知っているんだと。一番印象に残ったシーンでした。

どういう結論を持ってくるのかと思ったけれど、中途半端に救われもせず、物語としては、ぎりぎりの妥協なのかな? と思いました。幸せになって欲しいけれど、人殺しをやっている以上、救われてもいかんだろう、と言う気がしていたし。

アスラの物語はこれで終わったとしても、ロタ王国の問題は、何一つ解決していないわけだし、今後の課題ですね。「天と地の守り人」で、再びロタ王国が出てくるみたいだから、続きも楽しみにしてます。

神の守り人〈下〉帰還編 (新潮文庫)

神の守り人〈下〉帰還編 (新潮文庫)