去年の秋からひどい咳が出て、なかなか止まらないし、怖いのでちょっとプルトニウムについて調べてみようと思って、読んでみた。結論から言えば、この本は、プルトニウムという元素の持つ毒性について詳しく論じた本ではないので、そう言う意味では、ちょっと外した感じ。
どちらかと言えば、「核燃料サイクルの恐怖」とか、そう言う内容だったと思う。専門用語が多くて読みづらかったので、思いの外、読むのに手間取った。万人にお勧めとはちょっといいがたいものがあるかもしれない。
とはいえ、自分的に興味深かったのは、核燃料サイクルの過程で、ウランの採掘現場から発電所への輸送、再処理工場、高速増殖炉までつながる間に、どんな事故がこれまで起こってきたか、という説明が、いくつも挟まれていることで、割と有名なスリーマイル島の事故にしても、どんな風に起こって、何が原因だったのか、あんまり知られてないというか、少なくとも私は知らなかったし、教えてもらえたのが助かりました。
ウラン鉱の採掘現場で、インディアンが働かされ、肺ガンで死亡している実態。河川の汚染。核物質輸送の交通事故。再処理工場の事故。高速増殖炉の事故。その危険性がいかに重大か。
どれだけ多くの人々が死んでも、プルトニウムとの因果関係は認められない。認められないからこそ、プルトニウムが原因で死亡した人間はいないとされているプルトニウム安全神話。
これだけ多くの人々の死の上に、私たちの便利な生活が成り立っているとしたら、私たちはみんな加害者だ。その罪の重さを忘れてはならない。
「つまり、地上の人間にとって、ほんとうに重要な資源は、石油でもウランでもなく、水と土なのであり、その循環の範囲で人間は生活するしかない」一番印象に残った言葉をあえてメモ。最後にこの言葉が出てきて、泣きそうな気分になったので。
- 作者: 高木仁三郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1981/11/10
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