映画11.吉田恵輔監督 「銀の匙 Silver Spoon」(日本・2014)
原作コミックは、未読。アニメ版は、第二期第8話まで視聴済み。
たぶん、アニメ版が原作通りの展開なんだと解釈して、実写映画は、多少なりと脚本にアレンジを加えているように見えました。尺が決まっているから、それにあわせて縮めた感じ。
駒場くんとの友情をメインにして、彼の実家が破綻するあたりまでをまとめたみたいで、私が見ていないアニメの8話以降のエピソードも混じっていたのかも知れない。
アニメの第1期みたいに、豚丼とのエピソードを中心にするのかと思っていたら、そこはさらっと流しちゃったように見えた。
それでも、やっぱり実写の映像が強烈なのは、実際に肉の解体シーンが出てきたり、ニワトリを殺すシーンが入っていることで、なるべくはっきりとはみせないように、画面をぼやかしてはいるけど、豚に電気ショックを与えて気絶させたり、そのかたちを残したまま、肉がつり下がっている現場をみせられると、それはそれできついものがありました。
ただ、私としては、それを見たかったというのがある。アニメやマンガじゃなくて、実写の映像として、馬や牛、豚とふれあう現場の姿を見たかったんだ。
ばんえい競馬の様子にしろ、牛の乳を搾るシーンにしろ、たぶん、本場でロケしたんだろうし、アニメとして絵で見るのとは、まったく違う迫力がある。これは、実写ならではの醍醐味だろうと思うし、そう言う意味でも、興味がある人は、見ておいていいんじゃないだろうか。
個人的にちょっと嬉しかったのは、八軒くんが蝦夷農祭にちゃんと参加していて、自分で作ったばんえい競馬を、実際に応援するシーンが入っていたことで、祭りの前日に倒れてしまうアニメの展開があんまりだと思っていたので、この部分を直してくれたのは脚本の人に感謝。
平日の昼間だけれど、もう春休みに入っているせいか、観客のほとんどは10代かそれ以下の子どもたちだった。正直、この原作に若い子や子どものファンがちゃんと付いていたことにびっくりしたというか、この作品を支持しているのは、50代以上の大人だと聞いていたので、「まあ、大人が子どもに見せたい作品だよねえ」などと侮っていたんだけれど、ちゃんとギャグのシーンでは、子どもの笑い声が聞こえたので、それはそれでいいんじゃないだろうか。「よかったねえ。ちゃんと下の世代に受けてて・・・」と妙な安心感を覚えた。
実際、これはなるべく、若い子が見ておくべき映画だと思ったので。経済動物の問題には、子どものうちにきちんと触れておくべきでしょう。我々は、命を食べているんだから。