読書11.「村田エフェンディ滞土録」 梨木香歩 角川文庫
「考えてみれば、この世界も全体、だだっ広い合同教会と承知しておくのがよろしかろう。要するに雑居なのだ。それを思えば、滞りなく物事が運ぶ、ということが期待できぬのも当たり前だ」なるほどと思ったし、この文章表現がいいなあ。と思った。
遠い異国の地、トルコで、様々な人種の人々が同じ下宿で共同生活。神について語り合い、信仰の違いから摩擦もあって、それでも楽しく過ごした日々。
やがて、遠くなるその思い出の場所。もう一度帰りたいと思っても、もう誰もいない。
みんなで飼っていたオウムだけが繰り返す言葉。「ディスケ・ガウデーレ」「楽しむことを学べ」。ラストシーンの切なさを村田と一緒に味わって、どうしても泣けてしまうのです。