星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」下巻 村上春樹

読書20.「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」下巻 村上春樹 新潮文庫

やみくろが住む東京の地下を探検する冒険物語と、壁に囲まれた世界で一角獣の頭骨から古い夢を読む仕事をする物語。2つの世界が交錯して、交互に語られていくわけだけれど、どっちの世界観も独特で面白く、意味深に語られるいろんな出来事を、こう解釈すればいいんだろうか、それとも違うのだろうかと、いろいろ考えることができるのがいいと思う。

たぶん、正確な解答など存在せず、読者の好きに解釈していいよ。という感じなんだろうけどね。

以下、多少ネタばれありで書くけど。

私が強く感じるのは、「この世界、一寸先は闇」ということで、いつの間にか、実験に使われてしまった主人公の運命と、我々の足元に広がるやみくろの住む地下世界がつながり、ちょっとのすきに、いつ、運命が変わって、やみくろに呑み込まれるかわからないということ。

一方で、壁に囲まれた町の夢では、そこから脱出したのは、彼の影のみで、彼自身は、そこに残る選択をしたこと。今ある私たちの現実も、誰かの夢であり、脱出した影が作り上げたものなのだろうかと。夢が消えると、別の世界がまた生まれ、始まる。そういうイメージ。

ふっと、消えてしまう現実と、さらりと出現する夢の世界が重なって、交錯するのが面白かったです。