星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「ポセイドン」下巻 ポール・ギャリコ

読書25.「ポセイドン」下巻 ポール・ギャリコ ハヤカワ文庫

これは素晴らしかった! 文句なく、非常に面白かった。特に、ラストの落ちが秀逸。

 

以下、ネタバレ注意。

ラストシーンで、彼らが助かるだろうというのは予想の範囲だったものの、まさか別のグループが、もう一組、助かっていたというのは予想外だった。私も登場人物たちと同様、助かるのはこのグループのみだと思い込んでいた。これだけ苦労したのに、さして苦労したあともない(?)普通の格好をした人々が当たり前に救出されて、世の中の理不尽さをしみじみと感じる。

あと、あれだけ熱烈に愛を交わしあっていたカップルが、助かったら、結婚するとまで言いあっていたのに、救出されたとたんに、「もう会うこともないだろう」って、そりゃないよ。上下が正しい世界に戻ったら、たちまち身分の問題が出てくるのか、それでいいのか??

ほかにもいろいろ、そりゃないだろう?? という落ちが、あまりに見事にはまっていて、ああ、でも、人間って、そういうものかもしれないなと、人の運命ってそういうものかもしれないな、と、世の中の残酷さと理不尽さを、容赦なく突き付けてきたところに感動しました。

いろいろ貼ってあった伏線、いろいろな謎が、解明されないまま、読者の想像にお任せします状態になっているのも、結構、好き。刑事はなぜ、船に乗ったのか、だれを追っていたのか? 牧師はホモだったのか、そうじゃないのか? 彼と愛し合っていたと証言した女の発言は、彼女の妄想なのか、真実なのか?

人の世の容赦なさをこれでもかと突き付けて、それでも生きていかなきゃならない我々は、今までどんなに守られた場所にいたのかと、スーザンと一緒に思い知らなければならない。そういうところがよかったと思います。傑作でした。