星の原休憩所

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「次郎物語」上巻 下村湖人

読書28.「次郎物語」上巻 下村湖人 新潮文庫

次郎物語」は第5部まであるのだけれど、上巻では、とりあえず、第1部と第2部を収録。この物語は、小学生の時に第1部の簡略版を読んで、感想文を書いた記憶がある。完全版を読みたくて、中学生の時、図書室で借りて、全編を読んだはずだが、ほとんど忘れていた。覚えていたのは、小学生の時に読んだ第1部のみで、それもかなり部分的。読み直してみて、里親のお浜と一緒に過ごした時期が、こんなに短かったとは意外だった。

赤ん坊の時に里子に出され、のちに、実家に戻された次郎には居場所もなく、どこか、反抗的な子供として育つわけだけれど、子供の目線で、大人がどう見えているかをしっかりと書ききっている作者の力量に感心した。

どうして、この子は、こんなに強情なのか、いうことを聞かないのか。と、悩んでいる親に読ませたい気分になる。子供からは、大人がこう見えている。大人の持っている矛盾に子供だって気づくのだと。

ひねくれてみたり、反抗してみたり、そんな次郎の気持ちに感情移入しつつ、楽しんで読めた。昭和初期の文学のはずだが、非常に読みやすく、今、読んでも面白い。

実の祖母に嫌われた次郎だけれど、その代わりに、彼を取り囲んでいる人々は、みんな魅力的で温かい。子供の時には、お父さんがいい人だなあ。と思って、好きだったけど、今読むと、兄の恭一が非常にいいキャラだ。お兄ちゃん、優しいなあ。と思って、気に入っている。続きもすごく楽しみです。