星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「東の海神 西の蒼海」 小野不由美

読書16.「東の海神 西の蒼海」 小野不由美 新潮文庫

初版以来、26年ぶりに再読。初読の時よりも、今の方が実感を伴って読むことができたと思う。まず、斡由のような自分の失敗を認めることができないタイプというのは、実際に世の中に多いんだと今はわかること。水害による被害の恐ろしさを、最近、しみじみと実感すること。

一見、もっともらしく見える斡由の言葉に、うかうかと騙される自分も存在すること。

そういう部分を含めて、物語がきちんと斡由の欺瞞を暴いていき、堤を壊すかどうかで、斡由の気持ちを試した尚隆のやり方の巧みさに感心し、きれいなエンディングまでたどり着く。その完成度の高さを含めて、これは、見事だ。としか言いようがない。