星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「十二国記」第三十六話「風の万里黎明の空十三章」

浅野「ずっと考えていたんだよ。俺がこの世界にいる役割ってやつを」
陽子「世界は役割など与えてくれない」

言いたいことはわかるような気がするけど、ちょっとあんまりだと思った。
二重の意味で皮肉になっているような気がする。
最初から浅野くんにはこの物語における役割などなかったのだから・・・。

「世界における役割」というのは、つまり「自分の居場所」という意味と同意語だと思うんだ。
だから、この場合、制作者側は、「自分の居場所は自分で見つけるものだ・・」と言いたいんだろうけど、それでも心のどこかで「私はここにいてもいいんだ」と思いたいのが人間だと思うんだ。そんな救いのない言葉で思い切り否定しなくても・・・。(><)しかし、そう思っちゃうのも甘えなのかな?

もともと「魔性の子」から始まる「十二国記」は、一番最初の段階で「現実逃避するような人間が来るところではない」「そんな人間は来ることができない」と十二国の世界を設定している。
浅野と杉本の存在は、そもそもその根底を揺るがすものだ。

今回も、浅野くんと陽子が接触したおかげで、一気に物語のリアリティが崩れて、そういえばここは異世界だったんだなあ・・と私に思い出させてしまった。
浅野くんの言うことにも一理あって、無理矢理連れて来られた異世界なんだから、「一緒に日本に帰ろうぜ」という彼の主張は、本来なら当たり前なのだ。
しかし、王という役割を世界から与えられている陽子は帰ることができない。
そんな陽子が「世界は役割を与えてくれない」と主張するのは、そもそも矛盾していないだろうか?

そういう意味でも、浅野という存在は、この物語にはただの邪魔者に過ぎなかったのだ。こんな設定で登場させられた彼も救われない・・・。
狂人になりきれていないところが、かえって気の毒。