星の原休憩所

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「イラク」 田中宇

■「イラク」 田中宇 光文社新書

バグダッドの都」と言えば、私の中では長年、それは「アラビアン・ナイト」の「シンドバッドの冒険」の世界だった。だから、どこかしら現実味を帯びない物語世界の雰囲気があったのだけど、この著者がこの本の中でしっかりと描いてくれたのは、そんな「バグダッドの都」のリアルな日常風景だった。

今、TVで映し出されている画面を見ても今ひとつ現実味を帯びず、他人事のような気持ちで「戦争」を見てしまう自分がいて、それに気づいたとき愕然とするのだけれど、その攻撃されている町の中に、確かにちゃんと人間がいて我々と同じ日常があるのだと言うこと。それを改めて、再確認させられたような気がした。

学校があって子どもが通ったり、商店街があって人々が買い物をしたり、ホテルがあって旅行者がいて、タクシーがそんな人々を乗せて走り、同じ道路に会社へ通う車が走っているような風景。

まあ、実はこの本はそんな日常を丁寧に切り取っているだけで、行き先がイラクでさえなければ、ただの旅行記だと言えなくもないぐらいなんだけど。(←本当か? その程度の読みとりしかできなかっただけじゃないのか?)

思想的な部分に関しては、私は社会問題に無知なのでうかつなことは言えないし、やっぱ「旅行記」としての「読み物」として興味深く読ませて頂きました。非常に読み応えがあって、面白かったです。