星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「Kanon」栞シナリオ

「起きないから奇蹟って言うんですよ」

なんかもう、この言葉をじっくりとかみしめたい・・と思ってしまいました。物語として、一番やっちゃいけない禁を犯したシナリオ・・だと思いますね。

ラストシーンは、全部夢だと思うことにしましょう。彼はきっと悲しみのあまり、白昼夢を見る狂人になってしまったと言うことで・・・。
そうでなければ、あの姉妹は二人して主人公をからかっていたうそつきだったということになる。栞はともかく、香里がそうだとは思いたくないし、その点ではどう見てもシナリオが中途半端に崩壊していますね。

あゆによる奇蹟だと栞が説明しているけど、それはあくまで彼女の想像に過ぎないから、どう見てもとってつけたようで説得力がなさ過ぎる。そんな話でまとめられてしまったら、今までの緊張感は台無しでしょう。

栞はともかく・・と書いたのは、実は彼女はこのゲームに登場する女の子たちの中で一番性格が悪いんじゃないか? と思わされちゃったので。
口調こそ丁寧で「ですます調」でしゃべっているけど、よくよく聞けば「こうしてください」「ああしてください」「だめですよ、そんなの」「そういうこという人、嫌いです」「私はこっちがいいです」とまあ、実に自己主張の激しいこと。

これが女の子というものだと言ってしまえばそうなのかもしれないが、そんな彼女を相手にいちいち頷いて「欲しいものないか?」「何がいい?」とせっせとアイスクリームの運び人になっている主人公が情けなくて、なんだか嫌だな。

シナリオによって祐一のキャラクターが違うというのは、私じゃなくても指摘した人がいるらしいが、たとえば真琴に対しては「少しは懲りさせてやろう」「バイトぐらいしろ」「自分で探せ」と毅然とした態度を取っていたのに、なんで栞に対しては意味もなく甘いのか? 同じ物語の中にシナリオが同居しているので見ていてもかなり不自然だった。

とはいえ、若いカップルの典型例に一番近いのがこのシナリオなのかもしれないなあ・・とも思う。そういう意味では、一番共感を持たれやすいのかもしれませんが・・。

ただ、物語の都合で安易な奇蹟を呼んでしまったことには、絶対に反対したいです。不幸な境遇を勝手に作っておいて、物語のご都合主義で解決するというやり方は、物語の作り手が一番やっちゃいけないことです。それをやってしまったら、全てが「ウソ」になってしまうので・・。