星の原休憩所

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「ブレイブ・ストーリー」下巻 宮部みゆき

小説・一般10.「ブレイブ・ストーリー」下巻 宮部みゆき 角川文庫

最後まで読み終わったけど、やっぱり、これはかなり微妙。最初から最後まで、ワタルにまったく感情移入できなかったのが、ものすごく辛い。

そもそもことの発端となったのは、主人公の両親の離婚騒動なんだけど・・・。正直な話、うちの両親は仲が良かったので、両親が別れることにショックを受けている主人公の気持ちが、想像してもよくわからないんですよ。

不謹慎なことを承知であえて書けば、子供の視点で見れば、基本的には、親なんてどっちも「邪魔」じゃなかったですか? 彼らは、自分を縛ろうとする「枷」でしかない。

どちらか片方でも、あるいは両方でも、いなくなっちゃえばいいのに・・・と、少しでも思ったことがないかしら?? だから、一種、みなしごや片親の家庭に憧れを抱く心理というのがあった。小学5年生なら、なおのこと、逃避に近い家出願望があって当然だと思うんだけど・・・。

だからこそ、「親が離婚したぐらいでなんだよ」「俺はお前みたいなお気楽なお子さんじゃないんだ」と言ったミツルの気持ちの方に感情移入していまいます。どうしても・・・。

異世界に渡ってからも、なんだかご都合主義の連続で、主人公ってみんなに助けてもらってばかり、自分ではたいしたことは何もやっていないのに、必ず都合良く「こういう時はこうしなさい」と教えてくれる助けが入る。

・・・ものすごく気持ち悪い。こんな薄気味の悪い幻想世界は崩壊してしまえ! と、物語を読みながらずっと考えてましたから、世界を壊そうとするミツルの気持ちの方が非常によくわかる。

人間は、痛みと哀しみの方に共感するし、幸せそうに見える人は、大嫌いなんですよ。
私はワタルが嫌いだし、この暖かで優しい幻想世界も大嫌い。あるいは、それをさして「女神さまの世界」と呼ぶのなら、ワタルは罪を犯しても、その世界を崩壊に導くべきだったんじゃないかと思います。

逃避した自己満足だけで作られている幻想世界は、破壊されるべきだ。ましてや、それを創作ファンタジーという架空世界で子供に与えようとするのは、大人の欺瞞のような気がする。私は読みながらずっと気分が悪かったし、最後までそれが消えずに残っちゃった感じです。

嫌な本を読んだなあ・・・・と、いう気分。
どうせ読むのなら、荒んでいたミツルがワタルとの友情によって、救われるような話が見たかったと思います。ワタルだけ助かって、ミツルが・・・という展開は、やっぱりあんまりなので。