小説・一般18.「家守奇譚」 梨木香歩 新潮文庫
これは面白かった。純粋な和製ファンタジーという感じで、例えるなら明治版「ホリック」ですね。
明治時代ののどかな田舎を背景に、掛け軸から現れる湖で行方不明になった親友・高堂と、彼の家を預かった主人公綿貫氏の物語。異界へ行ってしまったはずの親友が、床の間の掛け軸をまたいでひょっこり戻ってきたり、隣の犬好きのおかみさんが、「それは河童の抜け殻ですよ」とあっさり解説してくれたり、異界の住人が主人公のまわりをうろうろしていて、それが物語の中にきちんととけ込んでいるのがいい感じです。こういう話は好きだなあ。
それでいて、怖い話と言うよりは、どこか懐かしく、優しい物語なんですね。それはまあ、異界のものと知っていて、苦しんでいるものを放っておけないからと介抱してやる主人公の優しさに由来しているのかも知れない。
逝ってしまった人と残っている人が、違和感なく会話できる世界というのもいいなあ、と思いました。短編集だから、読みやすいし、オススメです。