星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「くちぶえ番長」 重松清

小説・一般17.「くちぶえ番長」 重松清 新潮文庫

うーん・・・。基本的にはこの話も、「ぼくらのサイテーの夏」と同様、小学生の男の子を主人公にした児童文学風味の物語なんだけれど、どうにもこの作品に対しては、偽善っぽい臭いがして嫌だなあ、と言う気になってしまった。

何が違うんだろう? と、いろいろ考えていたんだけれど、出てくる大人たちが子供たちにどこか協力的で、みんな優しいというか甘いところが嫌なのかな〜と、少し思った。

決定打になったのは、ヒロインの女の子が転校前に木登りをするシーンで、神社の境内にある一番高い木に登るんだけれど、それを主人公の父親が応援しているのね。それは俺も登った木だから、頑張れって励ましているのだ。ついでに、神社の神主さんにも話をつけて、一緒に木の下で、彼女が登るのを見守っているんだけれど、なんかなあ・・・。大人なら、子供がそういう危ないことをしているのをそんな風に応援していていいのか? という気分になっちゃった。

普通は、止めるでしょう? やめろって言わない? 木の高さにもよるんだろうけど、大人としては、それって子供に注意すべきところなんじゃないの?

その手の危ない遊びってのは、大人がやるなって言っているのを隠れてこっそり登るからこそ、醍醐味があるんじゃないかという気がするんですけど・・・。

まあ、この場合は、児童文学だしなあ。隠れてこっそり登りました・・・というお話にしちゃったら、今時は変なクレームがつく可能性もあるし、それもふまえた上で、ちゃんと大人の許可を取って、見守ってもらいながら登りました・・・という内容にしてあるんだろうか? と思って、なんだか嫌な気分になってしまった。

私が子供の頃感じていた、「大人はみんな敵」みたいな感覚がどこかなくて、なんかきれい事になっているような気がするのね。

物語が全体的にきれい事過ぎて、気持ちが悪いなあ、と思いました。大人が子供のために優しい、ファンタジックなお話を作りたかった・・・という作品として感じる。

「ぼくらのサイテーの夏」がそうじゃないのは、あそこに出てくる先生は、子供に対してきちんと罰を与えた上で、労働の喜びを教えているからでしょう。そちらの方が、好感が持てますよ・・・。