星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「熱球」 重松清

小説・一般18.「熱球」 重松清 新潮文庫

これは面白かった。かつて、甲子園まであと一勝と言うところまで勝ち進みながら、部員の不祥事で出場辞退をしなければならなかった野球部員の、その後の物語。地元の期待と、その分、大きかった失望と、無責任な噂から逃げるように東京に行って、今、20年ぶりに故郷に帰ってきた主人公の物語。

「こんな田舎なんか大嫌いだ」という主人公の気持ちに共感しつつ、さて、これからどうするのか? このまま田舎に残るのか、東京に戻るのか、進む道を決めあぐねている彼の優柔不断ぶりがじれったくて、実際、どういう結論を持ってくるのか、気になって気になって、読み続けてしまいました。

「逃げちゃダメだ」と、「逃げてもいいのよ」の間を行く物語で、「勝ち続ける人なんか、誰もいない」「みんな、どこかで必ず負けるんだ」って。「甲子園とは、そういうものでしょう」そのラストのセリフが気持ちよかった。

その上で、自分はどうしたいのか。他人の意向はどうでもいいんだから、親のことを考えて、親のせいにしていないで、子供のことを考えて、子供のせいにしていないで、自分の道を自分で決めろ! という部分が、なかなか感動的でした。よかったです。