小説・一般26.「春のオルガン」 湯本香樹実 新潮文庫
面白かった。何か特別なことが書かれているわけでもないのに、読後感が気持ちいい。
小学校を卒業して、中学生になるまでの春休みを過ごしている少女を主人公にして、弟と一緒に過ごした日々の様子が丁寧に描かれている。敷地のことでもめている隣のお爺ちゃん。このトラブルのせいで、家庭内がどこかぎくしゃくしていて、弟は、悪いのはすべてあいつだ! として、隣の家に猫の死体を投げ捨てる。
あいつは猫が嫌いだから、もっと猫の死体を探そう・・・とばかりに、弟は猫の死体探しを始め、主人公の少女は、それにつきあう羽目になる。
そんな感じで進んでいくんだけれど、「春のオルガン」というタイトルの割に、オルガンはほとんど出てきませんでしたね。音楽の物語かと思ったら、思い切り外したかも。なんで、作者がわざわざ「オルガン」をタイトルに入れたのか、そこを考えると深いかもしれない。
なんにせよ、この弟がなかなかいい味を出してました。弟に引っ張られて、物語が進んでいったような感じがします。