星の原休憩所

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「ライトジーンの遺産」下巻 神林長平

小説・一般50.「ライトジーンの遺産」下巻 神林長平 ソノラマ文庫NEXT

これは面白かった。下巻は3本の短編が収録されてましたが、どれも秀逸の出来。特に最初の話が良かったな。「エクザントスの骨」だけど、犯罪者の話。「こんな奴に同情はしない」「だが、憐れみは感じる」この気持ちが何となく分かる。「かまって欲しい」という想いが切ないので・・・。

それに続く「ヤーンの声」は、「エクザントスの骨」と対にして描いたんだろうと思える前向きな話だし、最終話の「ザインの卵」は、キャラクターがフルに活躍して楽しめました。コウとMJの共同戦線がいい感じ。

「命はすり減っていくから死ぬのではない。自分の命の時間は増えていくのだ。積み木が高く積み重なっていくように、それがいつかは崩れるようにおれは死ぬのだ。積み木のブロックはバラバラになっても、そのように命の断片は残る。やがてそれは何かに取り込まれて、利用されるだろう」
「おれは消えても、断片の全てをこの世から消し去ることは出来ない」p197

なかなかかっこいい考え方だったので、メモしておく。

基本、どれも胸に訴える作品群だったので、これから神林長平を読んでみようという人にも、お薦めの作品だと思います。いい話でした。