星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

宮崎駿監督 「風立ちぬ」

映画2.宮崎駿監督 「風立ちぬ」 (日本・2013)

堀辰雄の同名小説は、ずいぶん昔に読んだことがありますが、サナトリウムにいる女性との恋愛小説だったという記憶しかなくて、内容はほとんど覚えてません。あんまり面白いと思わなかったという印象が残っているかな。

事前情報を出来るだけいれずに、見たいと思っていたので、他の人の感想はなるべく読まないようにして、ネタバレを避けてました。

で、見て、一番びっくりしたのが、パヤオがホモネタに走った!! という衝撃の事実でしょうか? 今までずっと宮崎作品を見てきましたが、こんなに露骨に男同士の絡みを延々と描いているのは初めてじゃないだろうか? なんで? 庵野の影響か? とちょっと疑ったほどで・・・。

正直、この世界、女は要りませんよ。後半に長々と描かれるヒロインとの恋愛は、はっきりきっぱり邪魔です!! なんでいきなり女に走っちゃったの!? と思って、その方がよほどショックでしたよ・・・。

「ぼくは女には興味ありません。ぼくが好きなのは飛行機だけです!」と言わんばかりの主人公のストイックさが好きだったのに、返す返す残念です。

特に、このヒロインの姉ちゃんが可愛くありません。子どもの頃の彼女は、まだ一生懸命な健気さがあって、よかったと思いますが、後半に大人になってから出てきた彼女は、どうもあんまり好きになれない。病気を盾にとって、主人公を誘惑している嫌な女に見えるというか、主人公の足手まといにしかなっていないじゃないですか。設計をやっている主人公に向かって、「もっとこっちに来て」と仕事の邪魔をするところとか、個人的には嫌いです。

男女の恋愛ものとして見るなら、確かにこの主人公のヒロインに対する優しさは、胸打つものがあると思うけど、なんかなあ。キャラが違うんだよ・・・。

一番引っかかりがあったのが、主人公の妹が、いきなり「私、菜穂子さんが大好き!」と言い出しちゃうことで、仮にも小姑が嫁にこんなに甘くていいのだろうか? 女同士の関係って、そんなに甘くないだろ? 私が妹の立場なら、このお義姉さん嫌いになるはずですよ。もともと、あんなにお兄ちゃん大好きな妹が、今までむげにされてきたのは、主人公が妹よりも飛行機を愛していたからで、妹としては、それも仕方がないかな。私よりも飛行機を取るそんなお兄ちゃんが好き。と言う立場だったはずで、それがどこの馬の骨とも知れない女にいきなり不意打ちで横取りされて、面白いわけがありません。

この妹とヒロインが、いきなり仲良くなるのは変で、そこには仲良くなるまでの過程としてもう一つドラマがなくちゃいけないはずなんですが、それが省略されているために、ものすごく唐突に見える。

会った時から、この人が気に入った・・・という設定なら、それはやっぱりいつものパヤオファンタジーだろうという感じがする。都合がよすぎるんです。みんないい人。みんな優しい。みんな仲良し。と言う。人間関係の機微が描けていない・・と言い切ってもいい。

ファンタジーと現実世界の融合という面から見ると、なんか格段に進化したというか、良くも悪くも「ハウル」以降の作品という感じがする。この夢と現実の混ざり具合は、ものすごく好み。

零戦を扱いながら、戦争を描いていないことに関しては、賛否両論出ると思いますが、これはこれで、面白い描写だなあ。と思いました。個人的には結構、好みかな?

ラストシーンの、ヒロインが死に神に見えることに関しては、わざとやったのかどうか、気になるところなんですけど。

やっぱ、私的には、技術者の話なんだから、男同士の物語だけで突き進んで欲しかったなあ。と思って、男女の恋愛描写が要らないと思うんだけど、一般向けにするにはそれしかなかったのかしら? と思って、むずむずしてますよ。

ただ、個人的にはいい映画を見たと思ってます。素直に面白かったですから。