「しあわせは子猫のかたち」「失踪HOLIDAY」の2編を収録。
乙一というのは、ホラー小説を書く人だと認識していたので、正直、もっと不気味で怖い話を書くのだと思っていた。実際に読んでみたら、意外なほど、優しく、暖かい、ほっこりした物語を書く人だったのでちょっとびっくりした。読んでみないと、わからないものですね。
「子猫」の方は、幽霊との共存生活を描いたもので、それでも、怖いと言うよりも、切なさの方が強く出ている物語だった。なんとなく、「あの花」を思い出したというか。ほのぼの系で進めて欲しかったので、ラストの犯人当てはいらなかったんじゃないかと、ちょっと思っている。
「失踪HOLIDAY」は、わがままお嬢様の家出劇だが、彼女の持っている寂しさが伝わる分だけ、どこか憎めない魅力的な少女となっている。携帯電話を通じて、こっそりと伝えられる家族の本音が感動的。子どもを愛するのに、血は関係ないんだと。ミステリー仕立てで描かれるから、落ちの部分は大体、想像はついたけど、突拍子もないことを言い出すお嬢様にハラハラさせられて、この先どうなるんだろう? と読ませる力量はさすがだった。ラストは優しく、こたつのようなぬくもりを残す、きれいな物語だったと思う。
- 作者: 乙一,羽住都
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2000/12/26
- メディア: 文庫
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