星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

ギャヴィン・フッド監督 「エンダーのゲーム」

映画4.ギャヴィン・フッド監督 「エンダーのゲーム」(アメリカ・2013)

字幕版を視聴。

原作は、もちろん既読。オースン・スコット・カードのファンです。カードの作品なら、出ているだけ全部読んでます。「エンダー」シリーズは、短篇版はもとより、「シャドウ」シリーズも、全部、大好きで、続きの刊行を待っている状態。

で、期待はせずに見に行ったんですけど、これが非常に面白かった♪ 大満足して戻ってきました。

いやあ、あの小説をこんなに見事にビジュアル化できるとは思わなかった。それぞれのキャラのイメージもぴったりだったし、バトルスクールでの無重力下の訓練の様子も、ちゃんと映像として見せてくれて、すごく嬉しかった。サラマンダー隊とか、ドラゴン隊とか、出てくるだけでもう、大喜びですよ。

小説で漠然とイメージしていたものが、きれいな映像で見られるのが嬉しい。それでいて、下手に改悪されていなくて、監督が、ちゃんと原作に敬意を持って、作品をつくってくれているのが伝わったから、それも嬉しかった。

この出来なら、原作ファンの友達になら「絶対に見に行くといいよ。オススメだよ!」と勧められるんだけど、果たして、原作未読の人に、この作品が面白いと思えるのかどうかは、私にはちょっとわからないな。

「「エンダーのゲーム」ってどんな話?」と聞かれたのなら、この映画を見てもらえれば、大体のあらすじぐらいはわかるだろうと言える。だけど、これは、あくまで、原作のダイジェストに過ぎないから。細かいニュアンスまでは伝わらないかも知れない。

以下、ネタバレに触れるけど、そもそも、この世界は、エイリアンの侵略によって、滅亡寸前であり、次に攻撃を受けたらもうおしまいだと言うところにまで追い詰められているわけで、大人たちにはもう打つ手がなかった。だから、大人に無理なら、大人とは違う感性で艦隊を動かすことの出来る子どもの指導者がどうしても必要だった・・・という設定になっているわけなんだけど、小説既読の私にはそれがわかっても、映画だけで見た人に、それがどこまで伝わったかね?

だからこそ、優秀な子どもを捜したわけだし、エンダーが「禁断のサードの少年」というのは、この世界は、人口統制されていて、夫婦の間に3人目の子供を作ることは、御法度であって、この夫婦に3番目の子どもがいるのは、両親の遺伝子が特別に優秀だから。特別に許可されて生まれた子供がエンダーなわけで、兄と姉についても調べたけど、どっちも指導者としては素質が欠けていた。3番目の子どもに最後の期待をかける。もう、後がない。時間もない。

そういう状況下で、エンダーは、バトルスクールに送られて、訓練を受ける。

映画と原作のニュアンスが若干違うのは、バトルスクールにいる間中も、エンダーは、訓練と称して、シミュレーションゲームをやらされていたわけだし、彼はゲームだと思っていたけど、それは実は本当の戦闘だった。

映画では、最後の戦闘だけが、本物の戦闘だったように見せているけど、実はバトルスクール時代から、彼がやっていた訓練は、もう既に、本当の戦闘だった。だからこそ、エイリアンの女王は、彼がバトルスクールで遊んでいたファンタジーゲームに介入して、メッセージを送ったわけでしょ? 彼が戦いを指揮していたから、彼が向こうの女王なんだと思ったわけだ。でないと、バトルスクールのゲームに女王が介入した理由が説明できない。

あと、エンダーがラストでショックを受けるのは、自分の命令で、エイリアンの惑星を滅ぼしてしまったからだけではなく、自分がゲームだと思っていたために、艦隊に星に突撃せよと命じて、全員を皆殺しにしてしまったことなんだ。みんなに死んでこいと命じておいて、自分はそれを知らなかったと。無人機だと思っていたけど、実は全部に人が乗っていたんだと。知らずに殺してしまった。なんで教えてくれなかったんだって、それがキモなんだけど、映画のニュアンスは微妙に変更されているように感じた。

見ているこっちは、それが有人だってわかるから、艦隊が一部、壊滅したところで息をのんだよ。このビジュアルはすごい。うわあ、本当に皆殺しだ〜って。子どもたちは、それを知らなかった。ゲームだと思っていたから、単に失敗しただけだと思っていて・・・。

大人がムキになって怒るのがわかるし、その気持ちも伝わった。ラストの方の緊張感はさすがですよ。

役者さんで言うなら、老いたハリソン・フォードが非常に良い味を出していて、往年のファンとしては、感動ものでした。若い子を指導する側に回っていて、それがまた非常に似合っていて、かっこいいの。

80年代の映画の数々を覚えているファンにとっては、感涙ものだし、この映画自体も、いかにも、その時代のSF映画という雰囲気を醸し出していましたね。あのころは、こういう映画がいっぱいあったよね。という感じで、どこか懐かしかった。

映画の観客も、どこか往年のSF映画ファンという感じだったし、年齢層も高く、若くても40代で、それ以上の人たちという感じだった。

だから、残念なのは、この映画は、最初から、その層を狙って宣伝を打つべきだったなあ。と思えることで、「セカイ系」とか「エヴァ」とか、的外れなことを言わずに、80年代風の名作SF映画が戻ってきた。ハリソン・フォードもいるよ、老いてなお、かっこいいよ〜と宣伝すべきだったんじゃないかと、私はそう思います。