読書5.「鹿の王」第3巻 上橋菜穂子 角川文庫
病気との戦いの物語だと思っていたが、もっとマクロな視点で、病気を人為的に起こさせるように働く、後ろ側で糸を引くものが存在し、故郷を追われた人間たちのそれぞれの想いがつづられていく。国が侵略され、今までのやり方が壊れてしまった時、あちらこちらでほころびが出るものなんだな、と思った。
その中で、
「多分。自分にとって一番大切なものを奪っていったのは東乎瑠では、なかったからなのだろう」
というヴァンの想いが、印象に残りました。戦争ではなく、病によって、愛する家族を失った。病こそが、彼にとっては、もっとも憎むべき敵だったのだと。