星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「川の深さは」 福井晴敏

14.「川の深さは」 福井晴敏 講談社文庫 評価★★★★

この作家の作品は面白いんだけど、ちょっと読んでいて気恥ずかしいね。
セリフ回しや登場人物がアニメの影響を受けているのがはっきりわかるので・・・。

感覚的には「ガンダム」と「パトレイバー」の世界観を足したような感じ?

物語途中で、ヘリコプターがトラックを追い越すんだけど、追い越すときに主人公がトラックの運転手をじっと見ていたためにヘリの機銃(?)までそっちを向いてしまい、あわてたトラックの運転手が事故を起こして、あらら〜と思っているうちにその光景が後ろに消えていった・・・みたいな描写があるんだけど、それだけ読んだらその情景はただのマンガでしょ? 反射的に「ダーティペア」あたりを思い浮かべたんだけど・・・。

そういうのが何となく嫌だなあ・・と思ってしまった。現実的な物語が一気にウソになるみたいで・・・。別にこのシーンに限らず、この人の作品では所々でマンガっぽいと言うかアニメっぽい描写が入ってくるので、小説として読む場合にかなり気になった。

前半の人間ドラマみたいなところでは、多少セリフがくさくてもそれなりに感動できるんだけど、後半に入って戦闘シーンばかりが続くようになるとかなり読みづらくて苦しいかも。そういうのが好きな人にはいいんだろうけどね。

ただ、テーマ的な部分には結構考えさせられたというか、日本の防衛についてあまりにも人任せになっている現状についてもっと興味を持つべきだ・・とか、右とか左とか自分たちの主張ばかり押しつけあっていないで、もっと相手の立場を考えて歩み寄りを図るべきだ・・とか、そういう部分に共感しました。

実際、本当に自分の身を守ることについて人任せになっているのは間違いないでしょう? いざとなったら、警察、自衛隊、米軍が守ってくれるだろうって・・。本当にそれを信じていいの? と、自分たちでもっと世界の動きに対して関心を持つべきだろうと言うこと。それは確かなんじゃないだろうか?

最後に、これから福井作品を読もうと思う人には「川の深さは」「Twelve Y.O.」「亡国のイージス」の順に読むのをオススメしておきます。世界観が全部つながっているので、時間軸通りに読むのが一番わかりやすいと思うし・・。

ただ、個人的に一番好きなのは「月に繭地には果実」ですね。結局・・。(^^);