10年以上前に夫が買ってきた本。裁断したいというので、慌てて読んでいる。乙一の本は、あと2冊あって、そんなに期待せずに読んでみたものの・・・。
これが面白かった。ラストではうっかり感動してしまった。
「A MASKED BALL」と「天帝妖狐」の2作収録。
最初に収録されている「A MASKED BALL」に関しては、そんなに感銘は受けなかったものの、「天帝妖狐」のまとめ方のうまさには、さすがに感心した。
体の中から、別の異形の体が産まれてくるという発想は、夢枕獏の「キマイラ」だなあ。と思って、アイディア的に目新しさは感じなかったものの、こちらを泣かせるのは、やはり主人公の残した手紙の最後の一文だろうと思う。
これを読んだ読者が、杏子のような行動を取れるかと、物語はこちらに問いかけているんだと思う。ほんの少しの優しさを、相手に与えることが出来るのかと・・・。
祈りのような言葉で物語は締めくくられる。いい作品を読んだと思いました。
ある種、「キマイラ吼」の完結編を見たような気分です。夢枕先生がもたもたしているうちに、こんな作品が出てきていたとは・・・。
- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2001/07
- メディア: 文庫
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