星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「天帝妖狐」 乙一

読書38.「天帝妖狐」 乙一 集英社文庫

10年以上前に夫が買ってきた本。裁断したいというので、慌てて読んでいる。乙一の本は、あと2冊あって、そんなに期待せずに読んでみたものの・・・。

これが面白かった。ラストではうっかり感動してしまった。

「A MASKED BALL」と「天帝妖狐」の2作収録。

最初に収録されている「A MASKED BALL」に関しては、そんなに感銘は受けなかったものの、「天帝妖狐」のまとめ方のうまさには、さすがに感心した。

体の中から、別の異形の体が産まれてくるという発想は、夢枕獏の「キマイラ」だなあ。と思って、アイディア的に目新しさは感じなかったものの、こちらを泣かせるのは、やはり主人公の残した手紙の最後の一文だろうと思う。

これを読んだ読者が、杏子のような行動を取れるかと、物語はこちらに問いかけているんだと思う。ほんの少しの優しさを、相手に与えることが出来るのかと・・・。

祈りのような言葉で物語は締めくくられる。いい作品を読んだと思いました。

ある種、「キマイラ吼」の完結編を見たような気分です。夢枕先生がもたもたしているうちに、こんな作品が出てきていたとは・・・。

天帝妖狐 (集英社文庫)

天帝妖狐 (集英社文庫)