星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「おろしや国酔夢譚」 井上靖

32.「おろしや国酔夢譚」 井上靖 文春文庫 評価★★★★

印象に残ったセリフ。
「日本では自分たちのように、容易ならぬ運命に弄ばれて、いっこうに自分の道の開けぬ者たちのことを親不孝の罰が当たったという。また、前世の酬いという言い方もする。おそらく自分は前世ろくなことはせず、その酬いで、今このような憂き目を見ているのかも知れない」

「併し、思うのに、自分は前世で悪いことばかりしたわけではない。いいこともしたに違いない。そうでなければ、今生に於いて、あなたに巡りあうことはできなかったであろう」p266

一世一代の告白というか・・・。感謝の気持ちを表すのに、これ以上の言葉はないかも知れない。いいセリフだなあ・・・と思いました。使える機会があったら、私も使ってみたいよ。(^^);
ちなみに、光太夫からラックスマンへの言葉です。若干、私流に縮めてあります。

先に「風雲児たち」を読んでいたので、キャラクターの位置関係が非常にわかりやすく、読みやすかったです。逆に言えば、先にマンガを読んでいるので彼らの結末が最後までネタバレしちゃっているというのも惜しいところなんですけど・・・。

ロシアと日本、二つの国を見ることになった光太夫の結末を見ると、日本だけを見ているのでは狭い考えしか持てないんだなあ・・・とよくわかります。
英語でも勉強した方がいいのかしら? という気分になりますね。

また、言論の自由のありがたみをひしひしと感じると言うか、言いたいことを思いきり言える世の中が、いかに大切なことかを痛感しました。いい作品でした。

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