星の原休憩所

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「霧のむこうのふしぎな町」 柏葉幸子

■「霧のむこうのふしぎな町」 柏葉幸子 講談社文庫

文句なく、すばらしかった! 実にいい話でした。面白かったです!

これは「千と千尋の神隠し」じゃなくて、どちらかと言えば「魔女の宅急便」ですね。「魔女宅」に「ラピュタ」の味を付け加えたようなものかな?
どちらにせよ、宮崎駿の原点がこの作品なのは間違いないでしょう。しかも、はっきり言って、宮崎作品よりはるかにすばらしかった。と言うより、宮崎作品に足りないものが、この作品の中にはちゃんと入っているんですね。

要するに、私が個人的に宮崎作品で一番嫌いなのが「魔女の宅急便」なんだけど、どこが嫌いかと言えば、主人公の女の子が困るたびに誰かが都合よく助けてくれる・・という甘っちょろい展開が嫌なんですよね。あまりにご都合主義な夢物語なので・・。
(代表的なのが、キキを助けてくれるトンボでしょう。なにしろ、彼女が魔女だと言うだけで「ステキだ」と気に入り、助けてくれるんだよ?? 世の中、そんなに甘い話が転がっているわけがない。男が女に親切なのは、下心があるときだけだよ)

この作者も女性だけど、やはり女性の方が同性に対しては厳しいものの見方をしますね。
自分の問題は、自分で解決すべきだ。自分のことは自分でやるべきだ。誰も助けてくれない。自分でがんばらなきゃダメなのだ。
その努力が認められて初めて、他人は力を貸してくれるのだ。最初から他人をあてにしていちゃいけない。

そういう厳しさが、この作品の中にはちゃんとある。(リナは最初からたった一人で霧の谷に来た。両親の力などあてにしてはいない)

「わたしゃ、ぐずは嫌いだよ」ときっぱりと繰り返すピコットばあさんは、そのままドーラの原型だし、髪の分け目を引き締めれば、気持ちも引き締まる・・というセリフからは、「ラピュタ」の1シーンが思い出せる。

宮崎アニメの場合、その厳しさがヒロインに対しては「ない」・・という点が問題なんだ。結局、あの監督は女に対して甘すぎるのが難点で、女性を持ち上げすぎなんだと思う。女の子が困っていると、助けずにはいられないのね。それが宮崎作品の限界かと思う。
千と千尋」では一生懸命、千尋の苦労ぶりやけなげさを出そうとしていたが、成功しているとはとても言えまい。

女の子は甘やかしちゃダメなんだ。そういうことだ。