星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「ジャン・クリストフ」第2巻 ロマン・ロラン

読書1.「ジャン・クリストフ」第2巻 ロマン・ロラン 岩波文庫

自分の主義主張を正しいと信じて、周囲に言いふらし、みんなを機嫌悪くさせて、どんどん追い詰められていくクリストフの姿が、あまりに痛すぎて、少しは周りの空気読めよ、お前・・・とこちらは、心配しているというのに、小説は、「それでも彼はやめなかった」と、続けるから、ああああっと思って、じれったいというか、もうやめてくれ~的な。

そんなことをして、主人公がどんどん嫌われていき、ついには居場所さえ失っていく物語を、ずいぶん、長い時間をかけて読まされて、疲れた。ただ、それによって、わかったことは、それでもクリストフのことが好きだという人は、数は少ないけど、やっぱり一定数はいるということだし、どんな人間がそんな彼を愛したか、ということを描写している人間観察の部分が面白かった。

「ジャン・クリストフ」第1巻 ロマン・ロラン

読書33.「ジャン・クリストフ」第1巻 ロマン・ロラン 岩波文庫

小学生の時に、子供向けの簡略版を読んで好きだったので、中学生の時に、図書室で借りて、完全版を読んだことがあります。その時も、読み終えて、面白かったという印象が残っていたので、40年ぶりに読んでみたけど、結構、きつかった。翻訳が古いのかもしれないけど、とにかく読みづらい。難しい言葉と読みが多すぎ。今の自分は、中学生の時の自分よりあほなのかもしれん。

ただ、読み直して、「あ、ここ覚えている」と思ったのが、ゴットフリート叔父さんが、「何を歌う必要がある? お前がこしらえるものよりも、あれらのほうがよほど立派に歌っているじゃないか」と自然の声、夜の歌を教えるシーンで、「ぼく、叔父さんが大好きだ!」とクリストフが抱き着くところと、父親が死ぬシーンで、「クリストフ、俺を馬鹿にするなよ」と繰り返し、言い続けたところで、よほど印象が強かったのか、この2か所だけが記憶に引っ掛かった。

今、読み直して、印象に残るのは、いろいろあって、飲んだくれになったクリストフに向かって、叔父さんが、「こんばんは、メルキオルさん」と父親の名前で呼びかけるところ。

この叔父さん、いい場面に出てきて、いちいちかっこいいんだわ。父親がどんな人生を送ったのかはあんまり語られてはいないけど、彼だって、いろんなことがあったから、人生に挫折したんだろうなあ。というのは見て取れた。生きていくのは大変だ。

物語はまだ始まったばかりで、クリストフだってまだ若いから、これから先、何が起こるのか、すっかり忘れている分、続きが楽しみです。続けて、2巻も読んでいきます。

「カストロとゲバラ」 広瀬隆

読書32.「カストロゲバラ」 広瀬隆 集英社インターナショナル新書

キューバ危機について、勉強したくて読んでみました。なぜ、そういう状況に陥ったのか? と。いろいろ歴史が詳しく書かれていて参考になります。カストロゲバラについても、名前を知っているだけで、何をしたのか、どんな人なのか、全然知らなかったので、教えてもらって助かりました。ラテンアメリカ諸国が、いろいろ大変なのは、よく伝わったと思います。

「次郎物語」下巻 下村湖人

読書31.「次郎物語」下巻 下村湖人 新潮文庫

軍国主義全体主義の流れが強くなる中、そこに逆らってまで、青年たちの自主自立のための塾を開きたいと頑張っていた人々がいたことに感心した。

何も考えずに、命令に従い、国のために死ぬことだけが大事だと、そんな教育方針が叫ばれる中で、自分で考え、自分で決めることというのは、そんなに罪悪なものなのかと。国というのを会社に置き換えれば、今だって、そんなには変わってないんじゃないかという気もする。

非常に気になるところで終わってしまっているが、続きを読みたかったと思う。ことに、道江の問題は、どうなったのか? 次郎から手紙を受け取った恭一はどうしたのか、気になるじゃないですか~。ここだけは決着をつけてほしかったな~。次郎の告白シーン、見たかったのに。作者が死んでしまったので仕方ないけど、その点だけは非常に残念です。

「山本五十六」 半藤一利

読書30.「山本五十六」 半藤一利 平凡社ライブラリー

山本五十六の名前は聞いたことがあったけど、どんな人かは全然知らなかったので、勉強になった。太平洋戦争についての知識が足りなくて、なかなか読み進むことができなかったが、ようやく読了。この本は、山本五十六の本だから、彼が死んだところで終わってしまうのだけれど、この先、戦争がどういう風に進んだのか、それだけがちょっと気になる。どう見ても、勝ち目のない戦いに、山本五十六が死んだあと、どんなふうに作戦が組まれたのかと・・・。

「次郎物語」中巻 下村湖人

読書29.「次郎物語」中巻 下村湖人 新潮文庫

第3部、第4部を収録。次郎も中学生になって、だんだん、深く物事を考えるようになってきた。いろんな出来事から、人間を学ぶ機会が増えて、読んでいるこちらも一緒に勉強させられている気分になる。

この作品って、思いのほか、教育的要素が強く、いろいろ考える次郎を通して、こちらにも学ばせようという作者の意図が見える。一歩間違うと、ちょっと堅物で説教的になりそうだけど、そこは登場人物の魅力で緩和されるというか、次郎に感化を与える兄にせよ父にせよ、先生たちにせよ、友達にせよ、みんな個性的だし、発言がいちいち素晴らしい。

世の中が、だんだん不穏になってきて、発言の自由がはばかられるようになったころ、次郎は思った通りのことを堂々と言ってのけて、見ているこちらが、大丈夫なのかと心配させられるし、しかし、彼なりにきちんと考えて発言しているのは見て取れるので、よほど応援したくなる。学校を退学させられた彼が、今後、どう生きるのか、続く第5部も楽しみにしてます。むしろ、第5部(下巻)で終わってしまうのが残念。物語の構想は第7部まであったらしいので。

「次郎物語」上巻 下村湖人

読書28.「次郎物語」上巻 下村湖人 新潮文庫

次郎物語」は第5部まであるのだけれど、上巻では、とりあえず、第1部と第2部を収録。この物語は、小学生の時に第1部の簡略版を読んで、感想文を書いた記憶がある。完全版を読みたくて、中学生の時、図書室で借りて、全編を読んだはずだが、ほとんど忘れていた。覚えていたのは、小学生の時に読んだ第1部のみで、それもかなり部分的。読み直してみて、里親のお浜と一緒に過ごした時期が、こんなに短かったとは意外だった。

赤ん坊の時に里子に出され、のちに、実家に戻された次郎には居場所もなく、どこか、反抗的な子供として育つわけだけれど、子供の目線で、大人がどう見えているかをしっかりと書ききっている作者の力量に感心した。

どうして、この子は、こんなに強情なのか、いうことを聞かないのか。と、悩んでいる親に読ませたい気分になる。子供からは、大人がこう見えている。大人の持っている矛盾に子供だって気づくのだと。

ひねくれてみたり、反抗してみたり、そんな次郎の気持ちに感情移入しつつ、楽しんで読めた。昭和初期の文学のはずだが、非常に読みやすく、今、読んでも面白い。

実の祖母に嫌われた次郎だけれど、その代わりに、彼を取り囲んでいる人々は、みんな魅力的で温かい。子供の時には、お父さんがいい人だなあ。と思って、好きだったけど、今読むと、兄の恭一が非常にいいキャラだ。お兄ちゃん、優しいなあ。と思って、気に入っている。続きもすごく楽しみです。