小説・一般1.「十一月の扉」 高楼方子 新潮文庫
タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて購入したが、これは面白かった。
中学生の女の子が、十一月荘という下宿屋さん(正確には、下宿屋ではないけど)を見つけ、そこに2ヶ月だけ滞在することになる。そこに住むステキな住人たちとしばしの間、過ごした日々を綴った物語。
主人公は、十一月荘の住人たちをモデルに「ドードー森の物語」というお話を書き始め、それが二重構造で物語の中に語られる。
要するに、この主人公にとって、この十一月荘がドードー森であり、そこはいわゆるムーミン谷なんだなあ・・・と思った。家族の元を離れて、しばしの間、心安らぐような大人の女性たち、小さな妹のようなかわいい少女と一緒に過ごす。
こちらの家出願望を満たしてくれるような、ちょっとした夢の世界だった。12月になれば、その日々は終わってしまうのだけれど、その夢の世界を一時的に共有できたことで、なんかちょっと幸せな気分になれるようなお話でした。
年末までに読み終えていたら、間違いなく2006年のベスト5に入れたんだけど、あとちょっとで間に合いませんでしたね。まあ、いいか・・。