星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「一瞬の風になれ」第一部 イチニツイテ 佐藤多佳子

小説・一般47.「一瞬の風になれ」第一部 イチニツイテ 佐藤多佳子 講談社文庫

佐藤多佳子版の「バッテリー」という感じかな? 「バッテリー」と違うのは、主人公は割と普通の少年と言うところ。

サッカー一家に生まれて、サッカーに天才的な才能を持つ兄がいて、だけど、自分はいつも試合に負けてばかりで・・・。そう言う主人公の持っている劣等感テーマに、結構、惹かれるものがあります。

「ボールさえなければ、お前はもっと速いのに・・・」と言われる展開が、好印象。高校から、この子は、サッカーを辞めて、陸上に転向するんですね。

劣等感テーマが入っている割に、そんなに卑屈な主人公でもないし、それでも前向きに一生懸命頑張っているところがいいなあ。ときに、自信なさそうなセリフを言いたくなって、でも、それをぐっとこらえて、言葉を選んで言い直す。そう言う姿勢や、彼を取り巻く先生の一言がよかったり、友人や先輩達との交流がよかったり、そう言う部分で、読んでいて、こちらも励まされます。

夢に向かって進んでいる高校生の青いエネルギーが、すがすがしくて気持ちいい。続きも楽しみにしてます。