読書3.「聖夜」 佐藤多佳子 文春文庫
「お父さんは、俺がいたほうがいいの?」「あたりまえだ」
私はもう、親が子どもを愛していないなんて言う物語を読みたくないんだよ。気分的に。だから、このセリフが、お父さんの即答が、主人公にとって救いになったように、私にとっても救いになった。
10歳の時に両親が離婚して、その傷を持つ故に、どこか世の中を斜めに見たひねくれ少年に育ってしまった主人公の、冷めた感じが魅力的で、これで音楽には天才的なオルガン奏者と言うんだから、ちょっと出来すぎにかっこいいんですが。
一人称小説の醍醐味を見たというか、主人公が知らないことはずっと伏せられていて、彼が動き、行動することによって、初めてまわりが動き、大人達の告白によって、隠されていた真相が明らかになる。その過程を追体験するのは、なかなか感動的な展開でした。
音の中に神がいると。みんなで歌う賛美歌のラストシーンが、印象に残ります。
- 作者: 佐藤多佳子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/12/04
- メディア: 文庫
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