読書21.「ほんものの魔法使」 ポール・ギャリコ ちくま文庫
面白かったです。登場人物のうち、一番、人間らしいキャラとして描かれたのは、ニニアンなんだろうなあ。と思いました。臆病者のニニアン、臆病さゆえに卑怯者のニニアン。その痛々しさ、こっけいさが、なんだか笑えないというか、見ていて、つらかったです。
エセ魔術師ばかりの街、マジェイアに、本当の魔法使いが現れたら、どうなるかというシミュレーションとしても、よくできていました。
生々しい人間の本性。それは、ヒロインであるジェインでさえ、例外ではなく、彼を本当の魔法使いだなどと、なかなか信じることはできなかったじゃないか? そういう部分が、非常によくできた物語だったと思います。
アダムが、ジェインに教えた本当の魔法。この小さなどんぐりが、いつか大きな樫の木になる。これこそが、世界の一番の不思議であり、魔法なのに、誰もそれに気づかない。
きみの中にある奇跡の魔法の箱。閉じられた箱を開くには、「あたしは、できるし、やってみせる」その言葉で、すべてが叶う、それが魔法の呪文になる。すてきな物語でした。