それから幾度も季節は巡りました。小さかった木もずいぶん大きくなりました。
ある日、二羽の鳥が飛んできて、彼の枝の一本に止まりました。鳥たちは遠くの空を眺めながら、楽しそうな声で歌いました。まだ若鳥でした。
二羽はその場所に巣を作り、やがて、その巣の中にヒナ鳥たちが産まれました。それからというもの、彼の周りは急に騒がしくなりました。小さなヒナ鳥達は母親からエサをねだり、満足するまで泣いたりわめいたりするからでした。
時には、小さくて無力なヒナ鳥を狙って、肉食の大きな鳥や獣が、彼の周りをうろつきました。彼はそんな時、枝をぶんぶん振り回して、ヒナたちを守ろうと頑張りました。
ヒナ鳥達は、彼のそんな努力の甲斐もあってか、すくすくと成長していきました。
ある日、ヒナ鳥の一羽が言いました。
「ボク達、いつになったら外へ出られるんだろう? こんな狭いところは、もう飽き飽きだよ」
すると、もう一羽が言いました。
「もうすぐだと思うよ。だって、羽の力もずいぶん強くなったもの」
そう言うと、そのヒナ鳥は小さな羽をパタパタさせました。それを見て、他のヒナたちは一斉に笑いました。羽をヨタヨタと動かすヒナ鳥の様子が、あまりに可笑しかったからでした。
「何が可笑しいのさ!」
そのヒナ鳥は、怒って叫びました。けれども、兄弟たちは笑うのをやめませんでした。
「ダメダメ。そんなヨタヨタ羽を動かしているようじゃ、まだ空を飛べやしないよ」
「飛べるさ!」
その時、その小さなヒナ鳥には、兄弟たちを見返してやりたいという想いしかありませんでした。自分は空を飛べるのだ・・・という絶対的な自信と共に。
「見てろよ・・・!」
兄弟たちに止める間などありませんでした。ヒナ鳥は思い切り羽を広げ、ジャンプしました。そして・・・。
兄弟たちの方が驚きました。ヒナ鳥は確かに飛んでいたのです。空が、小さなヒナ鳥を受け止めているかのように見えました。
ヒナ鳥は驚喜していました。
飛べた! 飛べた! 飛べた! 飛べた! 飛べた!
前方から、太陽のまばゆい光が差し込んできました。巣の中から見ていた兄弟たちには、ヒナ鳥の姿はまるで太陽と混じりあっているようにさえ、見えました。
ヒナ鳥達のちょうど真下の草むらのなかに、一匹のヘビがいました。【続く】
#連載するなんて書かなきゃよかったなあ・・・と早くも後悔。この話、ひどすぎる・・・。(><);