星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「ペンギン・ハイウェイ」 森見登美彦

読書34.「ペンギン・ハイウェイ」 森見登美彦 角川文庫

映画版は視聴済み。ネタバレ全開で書くので、映画や原作小説を未見、未読の人は、注意してください。

世界のほころびが修復されると、結び目だった人物がいなくなるという設定のSFを、萩尾望都の漫画で読んだことがあるのだけれど、物語が持っている理不尽さは、それに近いものがあるのかな? と思いました。この場合、少年にとって大切だったのは、お姉さんその人で、お姉さんがいなくなってしまうなら、世界なんて、このままでもいいじゃないかという、その思いが、ラストの会話でにじみ出ていて、切なかった。

海が少しだけ残っていればいい。そうすれば、お姉さんとずっと一緒にいられる。

小学4年生の夏休みは、誰にとっても、たった一度きりで、その楽しかった日々も、いつか終わりを告げる。大人びた少年の、子供の日のあこがれと、思い出とを、ずっと語り続けるラストシーンの切なさが絶妙でした。

人類代表の少年と、人類ではないお姉さんの、出会いと別れは、壮大な宇宙の広がりをも感じさせてくれて、彼女に向かって進むペンギン・ハイウェイの果てしなさに、愕然とするのだけれど、世界の果てがいかに遠いか、少年の目標がどれだけ高いか、その過程がいかに難しいか、考えると遠くて、でも、ぼくはそこに向かって進むだろうという少年の決意と信念に、敬意を表します。

いつか、教えてあげるつもりだ。ぼくがどれだけもう一度会いたかったかということを。この倒置法の使い方が、なんともずるいなあ。と思うんだよね。