■「竜馬がゆく」第7巻 司馬遼太郎 文春文庫 評価★★★★
印象に残った言葉。
●「時勢は利によって動く。議論によっては動かぬ」(p43)
●「竜馬は議論というものの効力を信じてはいない。議論によって人を屈服させたところで、しょせんはその場限りということが多い。」(p43)
この場合の利とは「経済」のこと。仲の悪い九州諸侯に向かって仲良くしろと説いても難しい。それよりは、互いの間を商社でもってつなぐ。
論より利が世の中を動かしている・・というのは、確かに説得力のある言葉だ。いろんな意味で・・・。
●「四,五十人も人数が集まれば、一人ぐらいは異論家がいる。いるのが当然でもある。その一人ぐらいの異論を同化できぬおのれらを恥じろ」(p232)
当たり前のようで、なかなか出来ないことだから、この度量の深さが凄い。
あと、印象に残ったエピソードは、いろは丸の件でしょう。
船をぶつけられて沈められたけど、相手は天下の紀州藩だし、こちらは一介の浪人に過ぎない。最初は完全になめられていたのに、知略の限りを尽くして、それに対抗して賠償金を勝ち取ったやり口が見事だった。こういう顛末は面白いね。なんにせよ、最初にやることは、世論を味方につけることなんだなあ・・と感心した。
この巻でのエピソードとしては、いよいよ大政奉還について話が出てきた辺りまでです。