星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「手塚治虫の知られざる天才人生」 手塚悦子

5.「手塚治虫の知られざる天才人生」 手塚悦子 講談社+α文庫 評価★★★☆

やっぱりどう譲っても、「手塚治虫の知られざる天才人生」というタイトルは大仰すぎて恥ずかしいなあ。確か、元々の単行本のタイトルは「夫・手塚治虫とともに 木漏れ日に生きる」というものだったはずだけど、文庫化にあたって変更したのは、そういうタイトルにしないと売れないだろうという編集側の判断だろうか? それにしても、どうもネーミングにセンスがないんだわ。

大体、「知られざる」とつけているけど、手塚先生の伝記に関しては、本人も自伝をさんざん書いているし、マンガのネタにもしているし、亡くなった直後には編集者だのアニメ関係者だのが手塚治虫ネタでさんざん変な小説もどきまで出していたから、もうすでにファンとしては読み尽くした感があるのだ。

だから、そういう意味では、手塚治虫研究関連の書物としての新鮮さは感じなかったんだけど、むしろ私が共感したのは、一人の妙齢の女性の自分史としての部分かも知れない。

「結婚するなら絵を描く職業の人がいいな」と漠然と思っていた独身時代と、実際、結婚してみたら大変だったという感慨と、故郷を離れて友達のいない東京へ一人で嫁いできたことの不安とか、それなのに夫は仕事で忙しくてちっとも相談に乗ってくれないと言う不満とか、夫の両親との同居で介護の際の苦労話とか・・・。

そういう主婦の先輩としての苦労話、体験談の部分の方が興味深かったです。逆に言えば、手塚先生の話はもういいから(←をい)、奥さんの話の方をもっとくわしく訊きたいな・・・と思ったぐらいで・・。そういう意味の読み応えはあったと思います。

あと、手塚家の3兄妹+長男の嫁である岡野先生が4人で書いた後書き代わりのコメントが面白かったです。るみ子さんのコメントを読んで、「やっぱどこの家庭でも母親と長女というのはぶつかるものなんだなあ」と思ってみたり、そういう葛藤の部分には触れずに「私の両親はとても仲のよい夫婦でした」と妹さんの文章できれいにしめてあるあたり、上手くまとめたなあと感心しました。

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