6.「バッテリー」 あさのあつこ 角川文庫 評価★★★★★
これは児童文学として発表されているけど、むしろ、親が読むべき作品だと思う。特に母親が読むべき作品でしょう。母親が読んで、子供の頃の気持ちを思い出せ・・・という物語だと思う。
主人公の自信家少年の中にある「なんで、俺の気持ちがわからないんだよ!」という「家族に対する強烈な苛立ち」には、ものすごく共感できます。
「見ていたくせに、ちっともわかっていないじゃないか!」「もっとちゃんと見ろよ! 俺たちの気持ちを考えろ!」という子供の側からの強烈な批判の声。
特に母親たちが子供に対して繰り返す「してあげるわ」「させてあげていたのよ」という声に対して、子供たちがあげる「違う!」「させてもらっていたんじゃない!」「やりたかったから、やっているんだ」「好きだからやっているんだ!」「なんで、それがわからないんだ!」という悲鳴に似た叫びに泣かされます。
親は、心のどこかで、子供を自分の持ち物のように扱っている。「貴方のためを思って、やってあげているのよ」そういう母親たちの声に対する、これは強烈な批判だと思った。自分だって、子供の頃にはそう思っていたはずなのに、大人になると忘れてしまって、自分の親と同じことを繰り返している。
祖父と母親という父娘。母親と息子という母子。ふたつの家族関係を軸に皮肉のように物語はそれを繰り返す。
だけど、最後にふと主人公は気づくのだ。
「そういう自分は、相手の気持ちを考えたことがあるのか?」
家族の気持ちを考えたことがあるのか? 父親の気持ち、母親の気持ち、弟の気持ちを考えたことがあるのか?
これは、そういう物語だと思いました。家族の問題を扱った物語として、オススメです。
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