62．「ブラックジャックによろしく」第９巻 佐藤秀峰 講談社モーニングＫＣ 評価★★
「精神科編」と言うことで楽しみにしていたんだけど、これじゃ結局、偏見を助長するだけじゃないのか？ という気がします。
特に気になったのが家族の扱い。「統合失調症は誰でもかかる病気です」と口では説明しているけど、どうもこれじゃ「私の育て方が悪かったんでしょうか？」と泣いているお母さんが、本当に一番悪いみたいじゃないか？
精神病の原因というのは、そう単純じゃないんだと言うことをもっときちんと描くべきだと思う。
現実的に家族に病気の患者が出た場合、周囲から一番非難されるのは「母親」なんだと言うことをちゃんと踏まえて描かないと危険だし、こういう描き方をついしてしまう作者の側にもどこかに「母親の育て方が悪いから子供が精神病になるんだ」という偏見があるような気がする。
そうやって全てを「母親」のせいにして、自分には関係がない・・という顔をしている世間の人々の偏見が一番嫌なんだよね。
１００人に一人がかかる病気なら、この病気は決して他人事じゃないんだよ。自分がかからなくても、現実に自分の兄弟が病気になった場合にどうすればいいのか、ましてや自分の子供がそうなった場合に、親はどういう態度を取ればいいのか？ きちんと考えるべきだと思う。
どうせ「家族」を描くなら、そういう意味も込めて「父親」や「兄弟」もちゃんと描いて欲しかったな。そうしてこそ、患者に対して「家族」はどうあるべきか？ どう接していくべきなのか？ という問題を突きつけて描くことが出来たはずなのに・・・。それがなかったことが非常に残念です。
