星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「バッテリー」第5巻 あさのあつこ

小説・一般12.「バッテリー」第5巻 あさのあつこ 角川文庫

巧と豪の物語と言うよりは、すっかり主役は瑞垣くんですね。と言うか、瑞垣くんの存在感が強すぎて、巧ですら影が薄くなってしまった感じがする。よほど、作者が瑞垣くんを気に入ったと言うことなのかな??

中学生で野球部員のくせに、ビールは飲むは、たばこは吸うはの不良少年のように描いてきましたが、単に親友に対して劣等感を抱き続けていたひねくれ少年としてのキャラだった前作と比べて、ずっと「悪(ワル)」としての比率が高くなったみたい。

その分だけ魅力的になったと言えなくもないけど、個人的にはちょっとやりすぎに見えたな。特に、「永倉を痛めつけるという方法もある」と言いだしたあたりでは、もはや何を考えているんだか? ついて行けない気がしました。そこまでする必要がどこにあるんだろう? という感じがしますからね。

瑞垣くんの泥臭さが強調された分だけ、巧がかわいく見えるようになっちゃって、「普通に女の子の話とかしようぜ」と言い始めたあたり、ごく普通の男の子になってきてしまったし、逆に傲慢少年のようだった最初の印象が薄くなっちゃって、これもまたキャラクターのバランスとしてもったいない気がしました。うーん・・・。

まあ、本編の方が荒んできた分だけ、番外編に登場してきた横手のバッテリーの話がなんだかさわやかで、読んでいて気持ちよかったです。特に投手をやっている不思議少年が実にかわいくてよい。つかみ所のない彼に対して、イライラしている捕手の少年の気持ちもよく伝わったし・・・。物語のテーマに見えた部分がラストに逆転する所もよかったです。

人は、相手のことをわかっているつもりで、全然わかっていないじゃないか?

と言うテーマ。他人を理解するのは、本当に難しいものだと思いました。他にも、色々考えたことがあったんだけど、無限に長くなるから省略。(^^);

簡単に書けば、瑞垣くんの隣にいる門脇くんの気持ちを最低限にしか出さなかった所が、ちょっと気に入ったかな? という感じ。門脇くんや海音寺くんの気持ちを掘り下げて考えてみると、いろいろまた見えてくることもありそうだなあ・・・という気がしました。