小説・一般18.「戦闘妖精・雪風<改>」 神林長平 ハヤカワ文庫
様様なものを愛し、ほとんどに裏切られ、多くを憎んだ。
愛しの女にも去られ、彼は孤独だった。
いまや心の支えはただそれのみ、
物言わぬ、決して裏切ることのない精緻な機械、
天翔る妖精、シルフィード、雪風。
冒頭の文章がかっこよかったので、ちょっと抜き書きしてみましたが、要するに、人間に絶望して、戦闘機を愛するようになった男が、結局、戦闘機にも見限られる話・・・ってのが、「雪風」なんですよね? (←ちょっと違うか? でも、大体そうでしょ?)
初読は、20年前です。大学の時に、先輩に勧められて読みました。その時は、ものすごく素直に「コンピューターって怖いなあ・・・」という印象を持ったことを覚えているんだけど、20年たった今、読み直して、「人間なんて戦闘の邪魔です。死のうが生きようが興味ありません」とばかりに、主人公を放り投げちゃう雪風が、めちゃラブリー♪ に見えるのはどうしてだろう?
うん、なんかその冷酷さ、容赦なさこそ、コンピューターだよなあ、と思って、すごくかわいく見えるわ。
「雪風はお前の恋人なんかじゃない。娘だ。彼女は成長した。いつまでもお前の言うなりにはなっていないぞ」
と、ブッカー少佐に言われるセリフがあって、雪風を恋人にたとえるのも娘にたとえるのも、最初はどうかと思ったんだけど、考えているうちに、だんだん納得してきた。
雪風は、零が育てて、教育した娘だという話。コンピューターっていうのは、男にとって、愛すべき存在であると同時に、扱いを間違えると、手に負えない疫病神でもあるという点で、女性なのか。そう言えば、神林はいつも、それを猫や異星人としても表現していたなあ、と思い出した。
小生意気で憎たらしいくせに、かわいくてしょうがない。という感じね。父親の娘への愛もそういうものかもしれないなあ、と、なんとなく、わかった気がした。
その辺をふまえつつ、続編も読んでみようと思います。続きも楽しみです。