星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「いつかパラソルの下で」 森絵都

小説・一般20.「いつかパラソルの下で」 森絵都 角川文庫

事故で突然亡くなった父親を訪ねてきた女性がいたことで、発覚する父親の浮気疑惑。今まで知らなかった父親の過去を、そうやって、娘と息子のきょうだい3人で追いかけていく物語。

厳格な父親の元で育てられた子供たちには、当然ながら、父親に対する恨みとコンプレックスがある。しかし、その父親の旧友を訪ねたり、故郷にまで行ってみることで、いろいろな出会いを重ねて、いろいろわかってくる事実がある。

面白いのは、このきょうだい3人のクセのある書き分けかな。仕事と女をふらふらと替えてばかりいるお兄ちゃんと、似たような感じで彼氏の家に泊まり込んでいる私と、上の二人を見て育って、逆に真面目すぎるほど真面目な公務員の妹と、上の兄と姉がふらふらした会話をすると、真面目な妹がきついつっこみを入れてくるのが、読んでいて、楽しかった。

あと、上手いなあ、と思ったのは、この兄弟は、父親の過去について「こうではないか」「ああではないか」といろいろ推測するんだけれど、そうなのか〜とこちらが納得しようとすると、実はそう単純でもなかったというひねりがいくつもこしらえられているところ。途中で、何度も驚かされたし・・・。

結局、親に対するコンプレックスなんて、みんな誰だって持っているし、自分の欠陥をそうやって親のせいばかりにしていて、いいのか? 20代も半ばを過ぎたなら、自分のケツぐらい自分でぬぐえ! というラストのメッセージが、なかなか強烈でした。

面白かったです。