この作品のすごさは、初読の時にわかっていたし、落ちの部分にも非常に満足していて、出来れば褒めちぎりたいところなんだけど・・・。
あえて、苦情を言いたいのは、再読故に見えてしまったこの作品の傷の部分が、どうしても気になるからで、私が編集者なら、「先生! この部分は、もう少し何とかなりませんか?」とリテイクを入れたいところなんだ。
傷というのは、たとえば、田中かおりの顛末の付け方。いくらなんでも、これはあんまりだろう?? と思ってしまったので、どうしてもここだけは文句を言いたい。
ほかのキャラはまだしも、かおりちゃんは、メインキャラとして、最初から主役クラスの動きをしていたんだから、どうしても思い入れが違う。彼女に、父親殺しなんかさせていいのか? そもそも、かおりちゃんはいくら屍鬼を憎いと思ったとしても、父親を殺せるような娘じゃないよ?? と思って、どうしても違和感が残る。
襲われたので、仕方がなく殺してしまった・・・というのならまだわかるけど、この場合、見るも無惨に惨殺しているじゃないか。弟の金属バッドまで持ち出して、殴り殺すのは、いくら何でもやりすぎだと思う。
物語上、そこまでしたくなるほど、彼女が父親を憎んでいたか? と言われれば、そうでもなく、逆に娘にそこまで残酷な殺され方をしなきゃいけないほど、田中家のお父さんって、ひどい人だっただろうか? と、考えても納得がいかない。どちらかと言えば、人がよくて優しい、仕事熱心ないいお父さんだったような気がするんだよね。
しかも、やるだけやっておいて、全部忘れました・・・でごまかしちゃうのは、罪の重さとしてどうなのかと思うよ。いくら物語とはいえ、やっちゃいけないことというのは、あると思う。
最終巻が、人間による屍鬼の惨殺シーンになるのはわかっていたんだけれど、わかっていた分だけ、ここだけじゃなく、ほかにも、あちこちに無理が見えるというか、このキャラがそこまでするのは、ちょっとおかしい。と感じる部分が見えてきて、それがちょっと残念でした。
- 作者: 小野不由美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/02/28
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