星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「屍鬼」第5巻 小野不由美

読書8.「屍鬼」第5巻 小野不由美 新潮文庫

この作品のすごさは、初読の時にわかっていたし、落ちの部分にも非常に満足していて、出来れば褒めちぎりたいところなんだけど・・・。

あえて、苦情を言いたいのは、再読故に見えてしまったこの作品の傷の部分が、どうしても気になるからで、私が編集者なら、「先生! この部分は、もう少し何とかなりませんか?」とリテイクを入れたいところなんだ。

傷というのは、たとえば、田中かおりの顛末の付け方。いくらなんでも、これはあんまりだろう?? と思ってしまったので、どうしてもここだけは文句を言いたい。

ほかのキャラはまだしも、かおりちゃんは、メインキャラとして、最初から主役クラスの動きをしていたんだから、どうしても思い入れが違う。彼女に、父親殺しなんかさせていいのか? そもそも、かおりちゃんはいくら屍鬼を憎いと思ったとしても、父親を殺せるような娘じゃないよ?? と思って、どうしても違和感が残る。

襲われたので、仕方がなく殺してしまった・・・というのならまだわかるけど、この場合、見るも無惨に惨殺しているじゃないか。弟の金属バッドまで持ち出して、殴り殺すのは、いくら何でもやりすぎだと思う。

物語上、そこまでしたくなるほど、彼女が父親を憎んでいたか? と言われれば、そうでもなく、逆に娘にそこまで残酷な殺され方をしなきゃいけないほど、田中家のお父さんって、ひどい人だっただろうか? と、考えても納得がいかない。どちらかと言えば、人がよくて優しい、仕事熱心ないいお父さんだったような気がするんだよね。

しかも、やるだけやっておいて、全部忘れました・・・でごまかしちゃうのは、罪の重さとしてどうなのかと思うよ。いくら物語とはいえ、やっちゃいけないことというのは、あると思う。

最終巻が、人間による屍鬼の惨殺シーンになるのはわかっていたんだけれど、わかっていた分だけ、ここだけじゃなく、ほかにも、あちこちに無理が見えるというか、このキャラがそこまでするのは、ちょっとおかしい。と感じる部分が見えてきて、それがちょっと残念でした。

屍鬼〈5〉 (新潮文庫)

屍鬼〈5〉 (新潮文庫)