「おれはいやだ。おれは他人を救済なんかしたくない。第一、余計なお世話じゃないか」
「余計なお世話ですって!?」「やみくもに奪い合い、殺し合って、右往左往しているじゃないの」
「確かに人間はスッチャカメッチャカだ」
「頭がおかしい。今にお互いの首をしめあって絶滅かもね」
「いいじゃないか! 死にたいやつは死なせろよ」
「殺されるのよ。弱いものから順に”欲”のえじきになって!」
「弱者も強者も同じだよ」「ためにならないと自分で真底思い知らない限り、どこまでいっても同じ愚をくりかえすさ」「第一、弱いものをくいものにしながら強者が肥え太るのは人間に限ったことじゃないぜ。動物も植物も同じじゃないか」
「人間は度を超えているのよ。それを”欲”といい、”業”というのよ」
「収奪し、殺戮する。そのこと自体でなく、限度をこえた分がよくない、というのか? それはまたずいぶんと・・・実用的な理屈だな!」「いったい、どこに線を引くんだ?」
アートマンとして、覚醒した二人の兄妹の、魔側に兄がつき、神側が妹というのが、なんだかわかりやすいな、と思った。正義感の強いのは、基本的に女性の方で、この会話の最後の一言が印象に残る。
「でも、いつかあなたにもわかるわ。トキ」「人間が一番傲慢だって」
- 作者: 佐藤史生
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