星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「日暮らし」下巻 宮部みゆき

小説・一般43.「日暮らし」下巻 宮部みゆき 講談社文庫

とにかく、微妙。犯人当てもひねりなさ過ぎで面白くないし、殺しの動機にも説得力がないし、物語のテーマもよく見えないし、芝居でごまかしちゃう展開もリアリティがなさ過ぎではまれないし、母親達がどいつもこいつもひどい連中で(生きていたくせに、佐吉に会いに行ってやらなかった葵と、自分の息子に「お前は不義の子だ」と話しちゃうおふじと、男恋しさに子供を二人捨てちゃうおみねと)、そんなのばかり見せられて、感動する要素が全然ない。なんかもう、がっかりしました。「ぼんくら」ですんなり終わっておけばよかったのに、なんでこんな余計な話を書いたんだろうと思う。

私が残念なのは、とにかく、佐吉と葵ですよ。葵が生きているんだったら、どうして佐吉に会いに行ってやらなかったのか、総右衛門は、何故、佐吉を葵の元に連れて行ってやらなかったのか、そればっかり気になって、ほかのことはどうでもいいから、それを教えて欲しかった。なのに、それを完全スルーしちゃって、感動の再会どころか、佐吉を葵の死体の第一発見者にするあたり、残酷なんてものじゃないでしょ。そんな話を見るくらいだったら、「ぼんくら」ラストで、実は葵は死んでいたんですよ・・・とも取れる描き方を見せてくれた方が、まだ好感が持てたかも知れない。

最初、予定していた展開から、途中でお話を変えたんじゃないかと邪推したくなりますね。湊屋の話を書くつもりで、途中で嫌になったから、止めたとか。そんな感じに見えました。

江戸の市井の様子は丁寧に描いてあったから、そういうのに興味を持たせる分にはいいかもしれないけれど、ミステリーとしては、完全に失敗していると思います。弓之助に萌えることが出来なきゃ、全然はまれない作品になってますね。非常に残念です。

このひどい母親達にも、実はそれぞれに深い事情があって、子供達を見捨てたわけでは決してなかった。と、そう言う物語を見たかったんですけど、全然逆だったし、佐吉を犯人と言うことにして、物事を収めちゃった湊屋は、結局、佐吉を疑っていたんだと、そう思っちゃっていいんでしょうか。それはそれで、本当にあんまりで・・・。一番かわいそうなのは、やっぱり佐吉だよなあ・・・と思って、溜息が出ます。まったくもって、ひどい話だわ・・・。