小説・一般47.「夢の守り人」 上橋菜穂子 新潮文庫
「人には誰しも、帰りたい時間と場所がある。あの頃の、あの場所に戻りたいという夢を誰もが持っている・・・」
この作品は、児童文学に属してはいるけれど、この設定で泣けるのは、子供よりも大人の方なんじゃないかと思いました。夢を見せてくれる「花」の誘惑と、その呼び声としての「歌い手」の設定は、面白かったです。
まあ、悪いのは、みんなこの「歌い手」なんじゃないの?? と思って、一部、腹が立ったことも事実なんですけど・・・。
トロガイ師の意外な過去が語られたり(彼女にも若い娘時代があったんですねえ)、魔物と化したタンダとバルサとの戦いがあったり、読み応え満載のおもしろさでした。
特に「タンダを傷つけるぐらいなら、私が死んだ方がいい」と言い切るバルサがよかった。そういう意味では、タンダはバルサの最強の敵になりえたんだなあ、と思って・・・。
夢のシーンで、人が鳥になるところがよかったです。この内容の方が、アニメに向いているんじゃないかと思いました。メタモルフォーゼのシーンが多いし、とにかく、夢の宮殿のイメージがきれいでしたから。
「飛ぶ力は、おまえが生きたいと望む力だ。苦しみも闇も、突っ切って飛び続けろ。おまえにはその力がある」←いいセリフだったので、ちょっとメモ。
良質なファンタジーとして、感動させてくれました。よかったです。
【おまけ】
アニメの方に出てきた人身売買組織「青い手」と、「魂抜け」「魂呼ばい」については、この巻で解説されている形ですね。少女がお嫁に行きたくない一心で眠りに入ってしまったという設定は、ネタ的にはこの作品から持って来ているんだと思います。
あと、トーヤとサヤは、この話の中で「何でも屋」の看板を掲げた店を出しています。彼らが店を構えるという設定も、こちらから持ってきたんだと見るのが妥当でしょう。ちょっとなるほど・・・と思いました。