星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「キノの旅」第5話

第5話「レールの上の三人の男」

見事にまとめましたね。「予言の国」の時は「まとめ方に無理がありすぎるんじゃないの?」などと言っていましたが、前言撤回します。やっぱ、出来がいいです。この作品。(^^)

原作でも「レールの上の三人の男」は好きな話だったんですが、別の短編である「仕事をしなくてもいい国」や「多数決の国」とつなげてくるとは思わなかった。「キノの旅」の細かいショートストーリーを、全部こんな調子でまとめていく予定で最初から計算していたのなら「予言の国」の展開も十分OKだったんだなあ・・と改めて思いました。お見事です。

「仕事をしなくてもいい国」のまとめ方は、前回の「大人の国」と同様のテーマがかいま見えたような気がしました。「仕事」ってなんだろう? と、改めて考えさせられますね。笑顔で仕事をするのが果たして大人か? それは一見、正論のようだけど、実は歪んでいる。

「レールの上の3人の男」の姿をどう思うか? あえてコメントを避けます。くどいことをいわなくても、見た人ならわかるだろうから。

なんで「多数決の国」を最後に持ってきたのか、一瞬悩んだんだけど、ラストシーンで納得。世の中、色々あっていいんですよ。他人に言われたとおりになんかすることない。道は一つじゃないんだから、自分が行きたい方に行けばいい。

キノの旅」の好きなところは、そうやって世界の残酷さ、不自然さ、ゆがみをたっぷり見せて「世界は美しくなんかない」とまとめちゃっていること。実際、美しくなんかないんだから。汚い部分がいっぱいだから。ひどいところだろう? この世界・・と語っておいて、だけど「それ故にこそ、美しい」と言う。

世界を「美しいもの」だなどと、きれい事を子どもに教えることを私は嫌悪している。だって、それはウソだもの。
本当に大人がなすべきは、社会の「汚さ」を包み隠さず、きちんと教えることだと思う。その上で、それでも世界はそんな汚れを内包しつつ、それ故にこそ美しいんだと語ること。

こういう作品が、10代が中心に読むだろうライトノベルから出てきたことを本当に嬉しく思っている。