星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「魍魎の匣」 京極夏彦

22.「魍魎の匣」 京極夏彦 講談社文庫 評価★★★★

読み始めてから、読み終わるまでに2ヶ月もかかった・・・。(><);

とにかく、非常に読みづらい。京極堂の理屈の部分がしつこいのと、関口氏をねちねちといじめているようにしか見えないセリフのやりとりが、読んでいてすごく嫌だった。

自分はやっぱりミステリーは向いていないなあ・・・と思う。伏線ばかりの文章を読んでいても、ろくろく内容を整理できる頭を持っていないんだわ。ただでさえ長い小説なのに、半分を過ぎる3分の2ぐらいまでは読みづらくて仕方がなくて、ちびちびと1ヶ月以上かけて読んでいたんだけど。

大体、ラストに入って伏線が整理されはじめ、謎解きの説明に入ってくれたあたりから、俄然面白くなった。特に、それぞれのキャラクターが隠されていた胸の内を明かすあたりには、人間の狂気がかいま見えてドキドキしましたね。

確かに、この内容では、現代を舞台にするわけにはいかなかっただろうなあ。昭和初期・・・という時代設定だから、こういう歪んだ恋情がやけに魅惑的に見える。

印象に残ったのは、母親が、発見された腕を娘のものかどうか確かめるのに「火傷のあと」を気にしたこと。7歳の時に自分の不注意で負わせてしまった火傷のあとがあるはずだと・・・。ほんの小さい傷で、ほとんど見過ごすほどのものなのに、そういうことは忘れないものです・・と語った。

・・・なんとなく、泣ける話だなあ・・・と思いました。実際、現実にもそういうことはよくありそうな話だから。娘の方は、母親を嫌って憎んでいたかもしれないけど、母親の方はずっとそれを悲しんでいた。そういう母娘のすれ違い。親子といえども、人間関係とは難しいものだなあと思わされました。