星の原休憩所

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「機動戦士ガンダムUC」第10巻 虹の彼方に(下) 福井晴敏 角川コミックス・エース

読書13.「機動戦士ガンダムUC」第10巻 虹の彼方に(下) 福井晴敏 角川コミックス・エース

・・・結局、この作品の失敗は、「人はわかり合える可能性がある」ときれい事を言いながら、自分の気に入らない相手は、「あんたは間違っている!」と一方的に決めつけて、ぶち殺していることだと思う。

可能性を信じたいというのならば、ぎりぎりまで相手とわかり合おうとする努力を為すべきだ。それをやらずに、ユニコーンの圧倒的な力を使って、フロンタルを倒す。ここに矛盾が出ているし、なおかつ、その際に、「あの男は独りだ」「信じることをやめた人間はああなる」「お前は違うだろう? 仲間がいる」というセリフが入り、みんなの残留思念と力を合わせて、ぼっちのフロンタルを攻撃するんですよ。なんだかいじめを見ている気分で、気持ち悪かった。

バナージがやるべきは、「亡霊は暗黒の世界に帰れ!」とフロンタルを追い出すことではなく、彼を救うことだった。

なんか全体的に、どこかで見たようなシーンをあちこちにちりばめてあるから、物語のテンプレートをつなぎ合わせて、お話をつくっているんだなあ。と言うのがわかる。わかるけど、その使い方を誤っている。もっともらしい構成になってはいるけど、キャラクターの芝居が、あり得ないぐらいウソっぽい。

こういう状況に置かれた人間が、こんな言動を取るわけないだろう! と言うのが、はっきりとわかって、最後の方まで行くと、人間じゃない人形みたいな偽善者連中が、うさんくさいきれい事だけを語りつつ、リアリティのない紙芝居のような演技をしているだけの、非常に気持ち悪い作品になってしまっている。

それがとても怖かった。もう、いいです。